私のうつくしい靴


御歳87歳にして軽やかな歩み、いつも髭ひとつ無いしわしわの頰とシワひとつ無いカッターシャツ、形のいいジャケットと、使い古されたきれいなくつ。


私のじーちゃんはめっちゃカッコいい。




高校生の時、私のローファーはいつもでかいゴキブリみたいにピカピカしてた。

もう2年前のことだ。


「足をまっすぐ前に出して歩きなさい」

じーちゃんのことば。私のじーちゃんは靴屋さんでした。


高校が嫌いで、いつも夜中に泣いていたけどじーちゃんが勝手に磨いた綺麗なローファーを見るとしぶしぶ学校へ行こうと思えた。


じーちゃんは頑固でお節介で鬱陶しくて家族から嫌われてるし、すぐ政治の話するし、おまけにそれってつまんない話だし友達もいないけど私だけはじーちゃんと1番の仲良しだ。


意地っ張りで人前で泣くことができないけどじーちゃんの前でだけは素直な言葉で話せるし大泣きしたって恥ずかしくないんだ。


じーちゃんは文鳥のチロルと今日も一緒に暮らしてるんだろう。

引っ越してからあんまり会うこともなくなってしまった。



いい靴を履くと背筋がすっと伸びて、心が広くなる。そんな魔法みたいなもの、信じられないけど、こればっかりは本当だって信じてる。